前回のあらすじ:ジェットコースターのように始まった恋も気づけばたったの1週間。
なのに「東京へ戻って一緒に暮らそう」なんて言い出した佐藤君に・・・
*************
さくら「考えるわ・・・」
欲深さに勝てず、結局こう言ってしまいました。
佐藤 「考えて。今度東京で会うまでに」
もう答えが出てるのに、モンモンとして決断をくだせない。遅かれ早かれダメになることはわかってるのに。自分のことを人間らしいなぁなんて飽きれつつ、もしかして別の意味でも彼に魅かれてるのかなぁとも思ったりする恋愛オンチな私。
佐藤くんの顔が近づいてきて、自然に目を閉じて唇を受け止めると、ちょっと胸の奥が跳ねるわけです。佐藤くんは大事なものを抱える込むようにそっと抱き寄せて何度もキスをします。
私といえば、彼の目が恋をしてるように見えるのに、それを素直に認められず、彼の中の打算を探ろうとしてしまう。
佐藤 「普通だったらこんなの考えられないよな」
さくら「こんなのって?」
佐藤 「沖縄マジックって思うだろ?」
さくら「ああ、そうだよね。こういう出会いと成り行きがね」
佐藤 「俺も正直こんな風になるって思ってなかった。東京に戻っても醒めると思えない」
素面だとそこまで口数が多い人ではないんですけど、文字にしてみると痒いですね・・・
佐藤 「お前、俺のこと好き?」
さくら「好き、だよ」
佐藤 「俺も好きだ。だから正直離れるの辛い」
ぎゅーっと痛いくらいに抱きしめられると、言葉より気持ちが伝わってくる気がします。もっと近づきたくなって、顔の前にあった彼の肩に唇を這わせてみると、両肩を掴んで体を離され、素早く唇を奪われました。それは性急で、貪欲で、下手に裸で絡み合うよりもずっと交わってる感覚にさせられるキスで、それまで考えてたことなんて一辺にどうでもよくなってしまうくらいでした。
人間が理性を捨てたら、ただの動物と一緒とはよくいったものです。
佐藤 「好きすぎてどうにかなりそうなんだけど。普段は一回ヤッたらどうでもよくなるのに」
彼の言うことをすべてまともに受けたら、彼はものすごく恋してることになるんだけど、どうしてもそれに乗っかれない。
自分で書いた小説ネタになりますが、小悪魔モードしてたわけじゃないけど、佐藤くんがハマったのは従順じゃない女だからとしか思えない。素直に寄りかかってみたらどんなことになるのか・・・もう傷つくことを知りすぎてる年齢だから、防御本能の方が活発に働いてしまうのです。
雨はなおも降り続き、お互いの体に触れたくて這いずり回る手を感じて、ただキスを繰り返し時間が過ぎていきます。これはもう恋としてしまっていいのかもしれない。少なくとも今はどっぷり浸かってしまってもいいのかもしれないともう一人の私が言ってます。
佐藤 「さくら、好きだ」
さくら「私も好き」
佐藤 「本当に?」
さくら「うん。離れたくない」
佐藤 「嬉しい」
言葉のとおり嬉しそうな顔をする佐藤くん。きっと私の顔も同じように笑ってたんだと思います。
着衣の乱れを正し、雨の中レンタカーに乗り込む時間がやってきました。
運転席の外側に立ち傘を差しつつ見送る私に、窓を全開に開けた佐藤くんが言いました。
佐藤 「一週間、ありがとうな」
さくら「こちらこそ」
佐藤 「トシに彼氏が出来たって言ってくれる?」
さくら「(とりあえず)言うよ」
佐藤 「(露骨にホッとして)お前が東京来た時、俺の友達に彼女だって紹介してもいい?」
さくら「うん」
佐藤 「(私の腕を掴み)東京に帰るのが楽しみになってきた」
さくら「え」
佐藤 「東京ではバリッとするの?化粧とか服とか」
さくら「ここにいる時よりはするかな」
佐藤 「待ってるから、東京で」
さくら「うん」
掴んだ腕を引っ張られ、お別れのキスは優しく長かった。
佐藤 「・・・じゃ、行くわ」
さくら「気をつけてね。こっちの道、めっちゃ滑りやすいから」
佐藤 「おう。お前もあんまり根詰めすぎるなよ」
窓が閉まり、車中で手を振る佐藤くんの運転する車は、ゆっくりと遠くなっていきました。
気分は遠距離の彼氏を見送った、まさにそんな遠い昔のことを思い出すような切なさでいっぱいです。
車が見えなくなってから、速攻いつもどおりの仕事に戻ったわけですが、仕事モードになると感傷が少し和らぎ、もしかして夢だったのかと思うほど。
でも、見送り終わる時までは、間違いなく恋してたんだと思います。
・・・続く・・・
他の遠恋の話はこちらから→Ranking[0回]
PR
COMMENT